「あ……金やん発見♪」
「どわっ!!おいおい…〜…」
「ん?」
背後から飛びついてきたは、きょとんとした顔で白衣を掴んだままこちらを見上げる。
「お前さん、高校生にもなったんだ。少しは落ち着いて行動しなさい」
「えー、充分落ち着いて行動してるじゃん」
「いや、今、飛びついた時点で、落ち着いてないって」
「お父さんとかは『も高校生になって大人になったなぁ…』って、しみじみ言ってくれるんだから!」
――― いや、それ…確実に親父さん、酒入ってる
「んで、何の用だ?言っとくが俺は忙しい身なんだぞ〜、用があるならとっとと話せ」
「あ、そうだった」
ようやく話す気になったのか、白衣を掴んでいた手が緩む。
そしてそのまま俺の前に回りこむと、くるりと1回転。
「似合う?」
「は?」
「は?…なんて酷い〜!今日から夏服に変わったから、一番に金やんに見せようと思って朝から探してたのに」
「ほほぉ…それで、現在に至る…と」
わざとらしく窓の外へ視線を向ければ、太陽は見事に真上に昇りきっている。
「…ひ、昼になっちゃったけど、努力は認めて……」
「へいへい。ごくろーさん」
「そんなんじゃなくてちゃんと見てよーっ!」
「あのな。俺はその制服を毎年見てるんだ。今更どうこうあるわけなかろう」
「毎年じゃないもん!」
宥めるよう頭を撫でていた手を掴まれると、僅かに頬を膨らませて恨みがましい視線で睨まれる。
「あたしの夏服はこれが最初だもん!」
「………」
「だから、他の人と一緒にしないで!」
それだけ告げると、は頭に乗せていた俺の手を振り払い、男子の間で可愛いと評判の顔を惜しげもなく歪めて見せた。
「あっかんべーーーっ……だ!」
そして、そのままばたばたと走り出し…あっという間に姿を消した。
残された俺は、走り去るの姿を目で追うわけにもいかず、窓辺に寄りかかるとポケットから煙草を取り出した。
「やれやれ…」
学内で火をつけるわけにもいかず、ただ口にくわえるだけ。
そうでもしなければ、今の気持ちを抑えられそうにない。
「一緒にしなきゃ、まずいんだって…」
何年も見てきた、制服
懐かしくもある、制服
誰が着ていようと…ただの服
『あたしの夏服はこれが最初だもん!』
『だから、他の人と一緒にしないで!』
「頼むから…あんま、俺の心乱すなや……」
くしゃりと前髪を掴み、大きくため息をつく。
それと同時に、昼の終了を告げるチャイムが鳴った。
「………やべ…昼飯、食いっぱぐれた」
付き合う前です。
追いかけてる時です。
ただ単に、終始目にしてる制服を意識なんてしたことないんだけど、好きな相手だとそうは思えなくなるってので、困ってるってのを言いたかっただけ(笑)
本当に制服を意識してる先生がいたら、それはただの危ない人です(どきっぱり)
そして、そのことをぐるぐる考えてたらば…昼飯食いっぱぐれちゃう金やんが可愛くて仕方ありません。